野口雨情 直筆書発見!
80年前天草を民謡行脚
今から80年前に野口雨情氏が書いたとされる直筆の掛け軸が熊本県天草市五和町でこのほど、発見された。雨情氏が天草に滞在したときに作った新民謡の中の一つと考えられ、関係者は貴重な発見と驚いている。
掛け軸は横33センチ、縦136センチで、
「南不知火(しらぬひ)北有明よ 船は島々通(かよ)て来る」
と和紙に揮毫している。
詩の始めに雨情氏の冠帽印「草深所」が押され、さらに雨情のサインの後に落款印「情仙」が押されていて、彼自身が書いたことを証明している。
城河原小学校7代目校長でその後、城河原郵便局長だった井下良市さん(1953年没)が所有していたものを、息子の由己さん(93歳)が保管していた。
野口雨情氏は「赤い靴」や「シャボン玉」など国民的な童謡や民謡で広く知られ、北原白秋、西条八十と並び、日本三大詩人のひとりといわれている。
今から80年前の1934年(昭和9年)10月15日、当時、九州日日新聞社の招きで、翌年3月から行われる「新興熊本博覧会」で歌われる郷土新民謡を作詞するために、天草にも来たことが同新聞記事に書かれている。
本渡の旅館「苓州館」や牛深「阿和屋」に泊り、同月19日熊本経由で帰京するまでの5日間、天草各地を行脚したことが分かっている。
本渡を詩った新民謡は彼の詩作ノート「旅の風草」に9節書かれていて、その時の作品と思われる。現在、天草に直筆書が残っているのは本渡城に上り、落城の時の様子や兜梅(かぶとうめ)伝説を聞き、それを詠んだ詩、十万山の栄えの桜を詠った詩などが残っており、確認されたのは今回3つ目で、大変重要な発見といえる。
また、五和町城河原小学校の校歌も作詞しており、2014年2月9日に行われる閉校式で、閉校記念式典実行委員会ではこの掛け軸を展示する。
(2014/2/3)
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