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これまで満月の夜に産卵するとされてきたテーブルサンゴが、熊本県牛深市の牛深海中公園で、闇夜の新月に産卵する事が確認され、新種のサンゴである可能性が高くなった。

サンゴは海水温26度以上になった、最初の満月に産卵するというのがこれまでの通説。
予定では8月4日だったがその日には産卵せず、半月後の8月18日、闇夜の新月前夜から産卵を始めた。満月、新月いずれも大潮にあたる。
熊本県本渡市のプロの水中カメラマン田中一志さん(53歳)が貴重なサンゴ産卵の撮影に成功した。

このサンゴは牛深市大島北側の海、水深8〜10メートルの位置にあり、正式和名はエンタクミドリイシといい、一般的にテーブルサンゴと呼ばれている。
緑色だが、このサンゴはベージュ色で、表面の突起も長さ2〜3センチで従来知られているものに比べて3センチほど短い。
テーブルサンゴと同じ種に分類されているが、見た目は明らかに違うという。(写真拡大)

18日の産卵は午後9時50分過ぎから始まり、約1時間にわたり、ピンク色をした直径1〜1.5ミリほどの卵がサンゴ表面のポリープから弾けるように、次々と飛び出し、まるで粉雪が舞うように海中を漂った。
1個の卵の中には卵子と精子が入っていて、海面に浮き上がり、約2時間後に破裂して受精する。田中さんは「無数の卵で、海が一面真っ赤に染まり、自然界の営みのすばらしさに、感動した」と話す。
この日の産卵は全体の約1割で、19日の新月をピークに、翌20日まで続いたという。今年はあいにく台風11号の接近で、その後の確認は出来ていない。

サンゴ産卵の映像は珍しく、約10年ほど前、天草でビデオ撮影されたものが、日本で初めて全国に紹介された。
田中さんらも昨年、撮影に挑戦したが、予定の満月の日には産卵せず、空振り。しかしその後も毎日、単独で潜り続け、観察を続けた。
表面の卵の様子を観察していくと、ピンクにだんだん色づき、熟成した色に変化していく。また核もすこしづつ、出口の方へ移動し、微妙な成長もわかるようになった。そして次の大潮で闇夜の新月に、どうも産卵しそうだ、と予測した。
そしてやっと20日目の潜水で、新月の夜に産卵を確認。田中さんの執念が実り、見事撮影に成功した。
昨年に引き続き、今年も観察を続けて、貴重な映像をカメラに収めることができた。(写真は田中さん)

九州大学大学院臨海実験所(熊本県天草郡苓北町)の野島哲・助教授(海洋生態学)は「新種の可能性が大きく、日本サンゴ礁学会で発表したい」と話し、沖縄の珊瑚礁は海水温の上昇が原因で、白化現象が見られ死滅の危機にあるが、田中さんは「温暖化でサンゴが北上していることと関係があるのではないか」と話している。


 
 

 


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