農薬、発ガン性物質のダイオキシンなど環境問題で行政や企業を正し、救済、支援する市民運動を手助けしてきた元大阪大学大学院理学研究科助教授、植村振作さんが2年前、退官を機にふるさと天草に戻ってきた。
植村さんは電車が嫌いで、騒々しい、排ガスの臭いのする都会からきれいな空気の天草へ「必然的に帰ってきた」と話す。
1936年熊本県本渡市生まれ。
大学では応用物理、環境科学が専攻。
生活環境に潜む農薬汚染を解明し、国の農薬行政を正す訴訟を支援したり、合成樹脂廃棄物問題等で市民運動を続け、環境問題の草分け的存在で知られる。
天草へ戻ってからも「生活環境を汚染する化学物質の規制に関する法律」の制定運動で全国を駆け回るなど、精力的に活動を続けている。
特にゴミ焼却時に発生するダイオキシンはその発生源について、塩化ビニール工業界と大論争を展開している。
塩ビ工業界の主張する台所ゴミに付着する食塩が加熱され分解し、ダイオキシンの元となる塩素を発生させるとする「食塩原因説」の実験結果を、植村さんは「悪知恵を持った者がデザインしたインチキな実験」と主張。
そのプロセスを暴露した。
食塩を加熱しても通常、塩素は発生しないが、塩ビ工業界の実験では食塩に吸湿性のある「活性白土」を混ぜることによって塩素を発生させる実験を行い、市民には「活性白土」を混ぜたことを隠していたという。
(食塩に「活性白土」を混ぜ、加熱すると塩素が発生する実験)
植村さんはゴミ焼却で塩ビを燃やさなければ、ダイオキシンの発生は10分の1に減るといい、「塩ビの使用をやめて欲しい」と主張する。
母乳から検出されるダイオキシンはかつて農薬散布されたものが現在、人の体内に蓄積しているもので、いまゴミ焼却炉から出ているダイオキシンはいずれ人体を汚染し、次の世代が危険にさらされることになる。
植村さんはダイオキシンの発生原因を絶つ「予防原則」が必要で、国のゴミ処理方法は高額の焼却炉建設に多額の税金を投入しているだけで、ダイオキシン対策の問題解決にはなっていないともいう。
田舎にいても原稿はインターネットで送れるし、不便さは感じていない。
むしろきれいな環境の中で、ミミズクの巣を発見して、その親子を写真に収めたり、原稿を書きながらその合間に、竹で自宅の垣根を作ったりして、田舎生活を楽しんでいる様子。
自宅のある本渡市の市の鳥がカワセミだが、市に問い合わせても観察できる場所を知らなかったという。
天草も都市化の波で、山や川が宅地化され、自然が破壊されつつある。
植村さんはカワセミが住めるような環境であって欲しいと、ふるさと天草から訴え続ける。
2002.Mar.
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