ユーモラスなタッチで妖怪たちが描かれた「百鬼夜行絵巻」(ひゃっきやぎょうえまき)が熊本県天草市で見つかった。春夏秋冬、季節の変わり目(節分)には妖怪や鬼が出るという古い伝承をモチーフに描いたものと思われる。
調査にあたった専門家で福岡市美術館の中山喜一朗副館長によると「江戸時代後半から末期(19世紀)に狩野派絵師の粉本(絵手本)として描かれたものだが、きれいに着色されて欠損がない。完璧な粉本は初めて。
また最後のシーンで柊鰯(ひらぎいわし)や柊に目をやられ鬼や妖怪が退散するシーンを描いたものはこれまで見たことがない。新発見で、大変貴重なものだ」と話している。
この絵巻物は和紙を縦横に貼り合わせ、縦26.5センチ、長さ998センチもある大きなもの。拍子を頭に乗せた器物の妖怪などから始まり、百余りの様々な妖怪たちが行列をなして練り歩く様を描いたもの。
右から左に向かって時間が流れてゆき、夜明けに朝日が差し込み、柊イワシで妖怪や鬼が退散するシーンで終わっている。
絵師の落款(らっかん)、印章はなく、作者は不明。同市に住む薩摩藩にゆかりのある民家に代々、伝わったものだ。同様の絵巻物としては室町時代に土佐光信が描いたとされる京都市大徳寺の真珠庵に所蔵されている「百鬼夜行絵巻」(国指定重要文化財)が知られている。
県立天草高校(前田三千治校長)の学習センター大研修室で2017年8月11日、長さ約10メートルもある絵巻全体が広げられ、調査が行われた。
中山副館長によれば「これは江戸時代後期、大名家に仕えた狩野派の御用絵師がネタ本として持っていたものだろう。
粉本は通常、縮図であったり、色が着いてないものもあるが、完成した作品と同じサイズで、描き直しも全くなく、きれいに最後まで着色してある。完成作品と同じクオリティーで、このようなものは初めて見た。
しかも最後の場面で柊イワシや鬼が退散するシーンを描いたものはこれまで発見例がなく、大変珍しい」と話している。
(2017/9/7)
更新履歴
◎関連番組:「百鬼夜行絵巻」天草市で発見」
◎関連記事:西日本新聞「節分「柊鰯」で鬼退散 天草で「百鬼夜行絵巻」を発見 狩野派絵師の手本か」(2017.9.3付朝刊)
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(番組本編:3分57秒)
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