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タコ取り物語
 
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夜な夜な馬を盗みに来る怪物は何?!/おとりで捕獲作戦!/「まんが日本昔ばなし」でも紹介。

(解説)
この絵本は熊本県天草市佐伊津町に伝わる昔話「金馬」をもとに作られた創作物語です。昔話の舞台は「金浜城」(佐伊津城)城下の美しい白い砂浜あたりでしょうか。

有明海に注ぐ隅田川河口の金馬岬には関ヶ原の戦いの後、1601年から天草を治めた唐津藩の寺沢氏によって築かれた城跡があります。今では南側斜面に城の石垣が残るのみとなっています。

市の教育委員会が建てた案内板が脇に立っており、それによると「慶長肥後国絵図には『佐伊津城』に天守閣が描かれている」とあり、当時は石垣と天守を備えた立派な城であったといいます。

もともとのストーリーは、海岸に放し飼いにされていた馬を、夜な夜な大ダコが盗みに来ていました。困った村人が知恵を絞り、金物で作ったおとりの馬の胴体の中に炭火を入れ、それに襲いかかったタコは焼かれ、退治されたという話です。

馬泥棒を大ダコに例えた面白い伝説です。中世の天草では沿岸部に海賊が多く出没していたので、タコは海賊の例えではないかという人もいます。

かつて「まんが日本昔ばなし」(1983年2月12日放送)でも紹介されたという有名な民話です。 原作はタコを退治して話は終わりますが、子どもたちを対象にした絵本なのでここでは、大ダコに盗みはもう2度とやるなよ、と言って助けてやります。

その後、大ダコが恩返して豊漁になり、天草の有明海沿岸部で作られている特産品の「干しダコ」と結びつけて、村人たちは豊かに暮らした、というストーリーに仕立てました。

また『竹取物語』ではかぐや姫は月に帰って行きます。一方、この『タコ取物語』ではエンディングにUFOが登場します。
イギリスのSF作家、H・G・ウェルズの小説『宇宙戦争』(1898年)にはタコ型の火星人が登場しますが、馬を盗む大ダコもひょっとしたら火星人で、海ではなく宇宙へ帰っていったのかもしれないねと、子どもたちと想像を膨らませながら読むのも、夢があって良いと思いました。

本来の民話とはかけ離れ、およそ奇想天外な話だと叱責を受けるかもしれませんが、オーソドックスな民話の方は先学の濱名志松先生の著作『天草伝説集』(1986年)に委ねるとします。ぜひ、この本もご一読してみて下さい

。 さらに細かいところの設定では、大ダコの登場シーンは、ウミガメの産卵などと同じ「新月」としました。
新月は真っ暗闇なので外敵に襲われにくく、また満潮時には大潮になり、陸地により近くなるため、大きなウミガメも上陸しやすくなるといわれています。大ダコもこの時を狙ったのです。

また、描画は江戸時代の浮世絵師、歌川広重の「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」でゴッホも模写したという雨のシーンや、葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」で描かれている波の表現技法を取り入れてみました。
また登場人物の少年の衣装には更紗の文様を使い、南蛮風に描いてあります。

さらに干しダコの絵が出てくる最後の部分では、ゴッホ風のタッチの絵をめくる、すると実際の写真と重なるような仕掛けもしてあります。
子どもたちと一緒に楽しみながら、天草の魅力を再発見するきっかけになれば幸です。
(金子寛昭)

天草テレビ出版・インプレスR&D、20112年4月出版、レター判、33ページ、1,650円(税込)


【作者紹介】
金子寛昭・文/絵(CG)1957年、天草生まれ。天草テレビ代表、西日本新聞記者。
金子順子・絵/1962年、天草生まれ。現役の保育士、天草デザインプロジェクト代表。

(おことわり)
この話は熊本県天草市佐伊津町に古くから伝わる民話「金馬」をもとに新たに創作したものです。ストーリーや人名などはあくまで架空のものです。

(参考文献)
  濱名志松『天草伝説集』葦書房1986年、金馬岬、137〜138頁。
「まんが日本昔ばなし」(606話、1983年2月12日放送)

◎マスコミでの紹介=西日本新聞「タコ取り物語 絵本に」2022年6月9日朝刊、11日夕刊社会面。

◎関連番組=絵本「こちょこちょするよ」読み聞かせ

◎関連記事=絵本「こちょこちょするよ」幼児期のスキンシップについて

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