鶴田倉造氏が死去
天草コレジオ河内浦説を提唱
関係者から惜しむ声
16世紀末、天草にあったとされるキリシタンの最高学府「天草コレジオ(学林)」が河浦にあったとする学説を提唱した天草キリシタン史研究家で宇城市の鶴田倉造氏が2020年4月22日午前4時6分、老衰のため熊本市内の病院で死去した。享年97歳だった。
天草市五和町城河原出身。中学教員だった1959年7月『熊本史学』に「天草学林河内浦説の提唱」を発表。本渡にあったとする従来の説に対し、ルイス・フロイスの『日本史』など海外文献を根拠に、河浦説を主張した。
また天草四郎など天草のキリシタン研究『原史料で綴る天草島原の乱』の編著で熊日出版文化賞。さらに98年、地域文化振興に貢献したとして文部大臣賞を受賞した。
コレジオ所在地論争については天草市合併前の旧河浦町と旧本渡市で郷土史家を中心に60年以上も激しい論争を続けてきた。しかし2020年2月、コレジオが河浦にあったと書かれた場所を示す史料を天草キリシタン研究会が、英国の大英図書館に所蔵されていることを突き止め、さらに翌3月にオーストリアのウイーンにあるオーストリア国立図書館で新史料を発見。河浦説を決定づけた。
鶴田氏は病院で面会した家族が証拠発見の知らせを伝えると、指でピースサインをした後「ありがとう・・」と微かな声で喜びを伝えた。そして2つ目の証拠が発見されたことを伝える天草テレビの番組が公開された2日後、結果を見届けたように息を引き取った。
生涯を研究に捧げた鶴田さんの娘の淳子さんは「亡くなる前、父にとって最高の宝物をプレゼントしてもらった」と涙で声を詰まらせながら話した。
キリシタン史の専門家で慶應義塾大の高瀬弘一郎名誉教授は天草テレビの番組「新史料再び発見!オーストリア国立図書館に所蔵!河浦に天草コレジオ」を見て「思いがけず鶴田先生のお姿をも拝することが出来、洵に感慨深く、往時を懐かしく思い起こした。(訃報を聞き)尊敬申し上げる先生をまたお一人失った思いです」と惜しみ、深い悲しみを伝えた。また東大史料編纂所の五野井隆史名誉教授は「長年にわたって天草キリシタン史の研究を牽引されてきました先生の存在はたいへん貴重でした。先生のご冥福をお祈り申し上げます」と哀悼の意を伝えた。
(天草テレビ 代表 金子寛昭)
(2020/4/22)
◎関連記事:
○天草テレビ「新史料再び発見!オーストリア国立図書館に所蔵!河浦に天草コレジオ」(2020/4/20)
○天草テレビ「天草コレジオは河浦に!/跡地論争に終止符か/大英図書館に場所を示す古文書」(2020/2/19)
○西日本新聞 「天草コレジオ 謎に光 河浦示す古文書 英国に キリシタン最高学府所在地論争60年超」(2020年2月9日朝刊)記事中34行目「ラテン語で」は「ポルトガル語で」の誤りでした。お詫びして訂正します。(金子寛昭)
○西日本新聞 「天草コレジオ謎のまま?跡地の所在 かつて大論争 合併で下火 郷土史家危機感」(2019年12月14日朝刊)
○天草テレビ関連記事「天草コレジオはどこに?/60年以上も論争/決定的な証拠見つからず〜天草キリシタンの謎シリーズ(1)」
○天草テレビ関連記事「倉庫外に33年間放置したまま!/実は貴重な礼拝碑「カルワリオの十字架」/天草で初めて発見!史料的価値 高いと専門家」
○天草テレビ関連記事「新説を提唱!謎のキリシタン墓碑/新説を提唱!謎のキリシタン墓碑/イエズス会士のロペス神父か?」
○西日本新聞 「十字架刻む石碑 33年放置 天草市のため池から発見」(2019年12月7日朝刊)
○西日本新聞 「イエズス会神父埋葬か 地元の研究家が新説」(2019年12月3日朝刊)
○「白熱する論争の行方」天草テレビオピニオン(2002年1月)
○天草テレビ番組 コレジオ跡地論争白熱「欺瞞を暴く」片や「ねつ造」と主張(2001年)